このブログでは、第11話と第12話でアプルスイング(EPR swing)について、
- ボールを目で追わない
- 視線はインパクトゾーンに先回り
- ボールに合わせようとしない
- 予測した位置を振る
これらの重要性を説明してきました。
第11話、第12話はこちらから↓


実は下記の記事でも、秋山翔吾選手や浅村栄斗選手がインタビューで、アプルスイングと似たような表現をされています。
詳細はこちら↓

このような記事を見ると、確かにプロ野球選手も同じボールの見方を意識して、バッティングに臨んでいることがわかります。
とはいえ、「なぜ、ボールから目を離す方が打てるのか?」という疑問が残ります。
そこで、今回はアプルスイングの効果の「なぜ?」について、
バイオメカニクスの視点を加えて、より深掘りして説明したいと思います。
よくある誤解:「インパクトゾーンを見る打ち方」なのか?
アプルスイングを説明すると、「先回りしてインパクトゾーンを見るんですよね?」と聞かれることがあります。
しかし、これは半分正しくて、半分間違いです。
正確にはこうです
- インパクトゾーンを“見に行く” → ✕
- 結果として視線がそこにある → ◯
この違いは非常に大きく、ここを取り違えるとスイングが崩れた時に改善しづらくなってしまいます。
スイングフェーズで整理する
理解を整理するために、スイングを大きく3つに分けます。
① 準備フェーズ(構え〜テイクバック)
- 視線はピッチャー方向(リリース前)
- いつでも振り出せる準備をする
- ピッチャーの動きにタイミングを合わせる
② 体重移動フェーズ(テイクバック〜トップ)
- 視線はピッチャー方向(リリース直後)
- ボールをみて直感的にコースや球種を予測する
③ スイングフェーズ(スイング開始〜インパクト)
- 視線はボールから目を離し、先にインパクトゾーンに移動する
- つまり頭部はキャッチャー方向に回旋する
- 身体はピッチャー方向に回転し始める
ここが今回の核心です。
この③の時点で、
- ボールはすでに打者の“判断対象”ではありません
- 見て修正できる時間は物理的に残っていません
つまり、 ③でボールを見ることに、「視覚的な意味はほぼ無い」ということになります。
なぜ視線がインパクトゾーンに向くと打てるのか?
理由はひとつ。
身体構造的に、そのほうが良いスイングになるからです。
③における頭部・視線の本当の役割は、身体の回転方向と反対方向への動き(つまりカウンター)により、
- ボール情報の取得 → ✕
- 回転制御 → ◯
- 軸の安定 → ◯
- バランス・姿勢制御 → ◯
なのです。
つまり、体幹がスイング方向(右打者なら左)へ回旋する中で、 頭部が相対的に残ることで、
- 回転軸が安定し
- 体幹の回転暴走(悪い開き)が防がれ
- 下半身主導の回転順序が守られ
- バットが軌道が安定し、自然にヘッドが走る
という状態が生まれます。
最近では、バッティングにおけるカウンターというと、よく「カウンタースイング」という練習用バッティングギアのことをよく耳にしますが、
本来のスイング動作において、最も重要な動作としてのカウンターとは、この「視線をインパクトゾーンに置く動き」であり、
いわゆる商品の「カウンタースイング」とは全く別物になります。
「見ること」は目的ではなく、理想のカタチ
重要なのでもう一度強調します。
「視線をインパクトゾーンに向けること自体が目的ではない」
つまり
「ボールに当てるために見ているわけではない」
視線は、構造を整えた結果そこにあるだけです。
これまで「ボールから目を離してインパクトゾーンを見る」と言ってきましたが、
実は、大袈裟な練習方法として、インパクトゾーンよりさらに後方の「後ろ足の前付近を見る」という方法があり、これでも効果があります。
つまり、このことからも、インパクトを視覚的に確認する意味が無いことがわかります。
また、他の競技を例に考えてみましょう。
【サッカーのシュート】
右利きのサッカー選手が、右足で強くシュートを打いたいとき、
- 右脚は前方へ大きく振り出される
- 骨盤は左方向へ回旋する
- 上半身や頭部は右方向に捻じる(カウンター)
という状態になっています。
サッカーは正面にあるボールを蹴る動作なので、ボールを見るためなら、最後まで前を見続ける方が正確にボールを捉えられるはずです。
しかし、シュート動作の中で、頭部や上半身を敢えて反対に捻じっているところを見ると、
この視線の動きは、反対向きのカウンターとして、体の中心軸が安定させて、より正確に強くボールを捉えることを可能にしていることがわかります。
また、良い選手ほどこの動きを上手く使っています。
【ゴルフのスイング】
こちらも右利きのスイングをイメージしてみます。
野球とは異なり、ボールが前から飛んでくるわけではないので、もちろん視線は始めから固定されたボール(つまりインパクト位置)を見ています。
そこからスイングが進むに従い、骨盤や体幹は左回旋が強まりますが、視線(頭の位置)はそれにつられずにインパクト位置に向け続けています(カウンター)。
これも、良い選手ほど顔が残っています。
「最後まで見ろ」という指導が生んだ誤解
「最後までボールを見ろ」という言葉は、
- 本来は頭を最後まで残せ
- 頭までの軸を保て
という力学的に正しい意味を含んでいました。
しかしそれが、
- 当てるためにボールを見る
- 最後まで目で追う方がミスしない
という誤解に変わってしまいました。
アプルスイングにおける視線の結論
結論としては、
③でインパクトゾーンを見ることに 、視覚的な意味はほぼ無い
ということです。
それでも視線がそこにあるのは 、
頭部によるカウンターの働きを利用することにより
構造的・力学的に、身体の回転軸を安定させ、より正確に強くボールを捉えるためなのです。
まとめて読みたい
第14話|バッティング理論の前にあるもの――上達の共通基盤――

※【バッティング理論】全話一覧はこちら↓

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※本記事の内容は、筆者自身の経験と考察に基づく個人的な見解です。すべての選手・指導環境に当てはまるものではありませんので、参考の一つとしてお読みください。
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