これまでこのブログでは、スイング軌道や体の使い方など、いわゆるバッティング理論について書いてきました。
今回は少し立ち位置を変えて、「バッティング上達論」の話をしたいと思います。
草野球プレーヤー、野球少年、そしてそれを支える指導者のみなさんが、遠回りをせず、その努力を最大限に成果に繋げるためにも、ぜひ一読いただきたいと思います。
バッティングパフォーマンスの要素
まず大前提からお話しします。
バッティングのパフォーマンスは、「フィジカル × 技術×メンタル」でほぼ決まります。
そして、ここで言う技術とは、主にこの三つを指します。
- 「フォーム」「スイング軌道」(第3話〜第10話)
- 「ボールの見方(EPR swing:アプルスイング)」(第11話〜第12話)
- 「タイミングの取り方」(第13話)

体調、試合状況なども当然影響はします。
ただし、「長期的に上達する」という視点で見たとき、それらはいったん考えの外に置いてよいでしょう。
ここで定義するパフォーマンスは、極めてシンプルです。
来たボールをより確実に捉え、より遠くへ飛ばすこと。もちろん、最終的な目標は「試合で結果を出すこと」です。
ただし、バッティングセンターのような、まとまったボールですら、安定して捉えられない状態で試合に臨むのは、正にまぐれ当たりを期待しているのと同じです。
当然ですが、多少の差はあれど、試合で確実に結果を出しているバッターは、例外なくマシンではそれ以上の確率で捉えることができるのです。
フィジカルは裏切らないが技術は波を打つ
フィジカルトレーニングには、はっきりした特徴があります。
技術が伴っていなくても、やればやった分だけパフォーマンスは向上するという点です。
- 筋力
- 柔軟性、関節可動域
- バランス感覚 など
これらは積み上げ型で、比較的努力がそのまま結果に表れます。
一方で、スイング軌道やボールの見方といった技術は違います。
- 良くなったと思ったら打てなくなる
- 意識するほどミート率が落ちる
- 上手くいっていた感覚が突然ズレる
こうしたことは、珍しくありません。
しかし、これは失敗ではありません。
技術とは、試行錯誤と「波」を経験しながら、洗練されていくものだからです。
万人に効く「魔法の修正点」は極わずか
よく、こんな質問を受けます。
「ここを直せば、必ず良くなりますか?」
答えはこうです。
万人に効く修正点は、存在しないわけではありませんが、ほんのわずかしかありません。
バッティングは、4スタンス理論でも述べた通り、
- 身体特性
- 柔軟性
- 筋力
- 経験
- 動きの癖
これらの全体バランスで成り立っています。
そのため、「この形が正解」「ここを直せば誰でも打てる」といった話ほど、慎重に扱う必要があります。
多くの場合、部分的な修正は、全体との噛み合わせを見なければ逆効果になります。
バッティングは「確率」を上げる競技
「打率」という言葉が示す通り、バッティングは確率のスポーツです。
どれだけ
- 打ち損じを減らし
- 的確にミートする確率を上げられるか
ここが全てだと言っても、過言ではありません。
ゴルフを知っている方であれば、感覚的に理解しやすいでしょう。
もちろん試合では、配球、相手投手、メンタル、コンディションなども絡みます。
しかし、これだけは断言できます。
「練習で高確率で打てない人が、試合で高確率で打てることは、絶対にありえません」
これは精神論ではなく、紛れもない事実です。
上達の分かれ道は「アウトプット」
上達できる人と、伸び悩む人の差は明確です。
それは、「アウトプットしているかどうか」です。
- 動画を撮る
- 人に説明する
- 文章にする
アウトプットを行うことで初めて、自分のバッティングを客観的に見る視点が生まれます。
多くの人は、「改善方法がわからない」のではなく、「課題が見えていない」のです。
ただし、アウトプットには一つ、必ず理解しておくべき前提があります。
身体感覚と実際の動きは想像以上にズレる
自撮りした映像や画像を見たとき、そこにはほぼ必ず、身体感覚とのズレが存在します。
- 振れていると思っていたのに、意外と振れていない
- 止めているつもりが、身体が突っ込んでいる
- 我慢できている感覚なのに、映像では早く動いている
- 思っている以上にヘッドが下がっている
こうしたズレは、ほぼ全員に起こります。
これはフォームが悪いからでも、センスがないからでもありません。
人間は、「自分の動きを感覚だけで正確に把握できるようにはできていない」という構造上の問題です。
だからこそ、重要なことは、映像を見て一喜一憂することではありません。
「自分の感覚と、実際の動きはどこが、どの程度ズレているのか」この差分を確認するためにアウトプットを使う、という考え方が大切です。
アウトプットとは、正解フォームを探すためのものではありません。
ズレを可視化し、修正の出発点を作るための道具です。
試合では「考えない」ことも重要
最後に、もう一つだけ付け加えておきます。
実際の試合で、ボールを打つとき、「考えること」はできるだけ少ない方がよいです。
試合では、
- 反応時間が短く
- 状況が刻々と変わり
- ミスへの不安も生まれます。
そこで、細かい技術を頭の中で再生し始めると、動き(反応)は確実に遅くなります。
だからこそ、「直感を研ぎ澄まし、無意識の反応を最大限に活かすこと」も、重要な技術です。
つまり、
- 考えるべきことは、練習で考え切る
- 試合では、身体と直感に任せる
この切り替えができて初めて、練習で積み上げたものが、試合に表れます。
まとめ
バッティング理論の前に、押さえておくべきことは多くありません。
- パフォーマンスは「フィジカル × 技術(主にスイング軌道、ボールの見方、タイミング)」
- バッティングは確率論であり、まずはマシンを高確率で捉えることを目指す
- 万人に効く修正点は、ほんのわずか
- アウトプットが課題を可視化する
- 感覚と実動作のズレを理解する
- 試合では考えすぎず、無意識を活かす
次の第15話からは、これらの「上達の土台」を前提に、再びより具体的な技術(意識付け・練習方法)の話をしていきたいと思います。
まとめて読みたい
第13話|正しいタイミングの取り方とは?――その理論と練習方法――

第15話|アプルスイングの効果について――「視線」と「頭部」の役割をバイオメカニクスで整理する――

※【バッティング理論】全話一覧はこちら↓

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※本記事の内容は、筆者自身の経験と考察に基づく個人的な見解です。すべての選手・指導環境に当てはまるものではありませんので、参考の一つとしてお読みください。
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