第11話|バッティング理論の核心と盲点!「ボールを見る」とは?【前編】

バッティング理論

野球をやってきた人なら、一度は必ず言われたことがある言葉があります。

「ボールをしっかり見ろ

少年野球でも、高校野球でも、草野球でも、そしてプロの世界でも、頻繁に使われてきた言葉です。

私も長年、この言葉は当然だと信じ、常にピッチャーの投げてくるボールを、その言葉どおりに「見よう」としていました。

今回は、私のバッティング理論の中でも、最も重要なポイントだと考える

「正しいボールの見方」

について、詳しく説明したいと思います。

そして、それを用いたたなバッティング理論である

「EPR Swing:アプルスイング)」

についても、紹介したいと思います。

本当に「見て」打っているのか?

冷静に考えてみると、人間の視覚反応には限界があります。

まず、リリースからホームベースまでボールが到達する時間は

  • 球速150km/h・・・約0.4秒
  • 球速100km/h・・・約0.6秒

「それだけ高速で動くボールを、正確に目で追い、軌道を修正しながらバットを出す」

これは理論上、実は不可能です。

なぜなら、バッター視点では、投球は直線速度以上に角速度が問題になります。

※角速度とは、「視点から見て、物体がどれだけの速さで角度を変えて動くか」です。例えば、同じ速さで動く物体でも、遠くにあるとゆっくり動いて見えますが、近くにあると一気に視界を横切るように見えるのが角速度の違いです。

そして、人間の追視(目で追う)が機能する上限は約30〜60°/秒と言われます。

それに対し、100km/hの投球では、距離の離れたリリース直後は小さいが、手元では数百°/秒の角速度に達します。

つまり、動くボールは、人間の視覚処理・眼球運動の限界を大きく超えているのです。

ただ、実際にはインパクトにしっかり顔を残して、成績を残している選手が多くいます。

では、彼らはどのようにボールを見ているのか?

実はボールを目で追っていない

実は、私自身の試行錯誤の経験の中で、このような出来事がありました。

遊び半分で、

  • ピッチャーがボールを投げた瞬間に目を離し
  • 何もないインパクトゾーンだけを見て
  • 適当に振ってみた

すると、「ボールを見ていないのにジャストミートできる」という、今までにない感覚を経験しました。

一見すると矛盾しており、私自身も最初は「まぐれあたりかな?」と思っていました。

しかし、実はここにバッティングの本質があったのです。

見ているのは「未来のボール」

実は、重要なことは「ボールを目で追い続けること」ではなかったのです。

大事なことは、

「リリースの瞬間に、球速・回転・高さを一瞬で判断し、あとは「ここに来る」というインパクト位置を決め、その位置を見続けて打つこと」

だったのです。

つまり、

  • ボールに合わせるのではなく
  • ボールが来るインパクトゾーンを予測し
  • その場所を自分のスイングで振りにいき(置きティーのように)
  • スイングしているところにボールが入ってくる

というイメージです。

だから、画像などで確認しても、良いバッターはみんな「インパクト前であってもインパクトゾーンに顔が向いている」のです。

リリース直後(大谷翔平選手はボールを見ている)
ボールが半分の距離を超える頃(大谷翔平選手は視線をインパクトゾーンに先回りさせる)
スイング前後(大谷翔平選手の視線はインパクトゾーンに固定)

これができないと、フォームを直しても変わらない

はじめに、私がこの「ボールの見方」が最も重要なバッティング理論だとお伝えしました。

それはなぜか?

実は、どれだけ理想的なフォームを練習しても、この「ボールの見方」ができていない限り、実際のボールを打つ場面で理想的なスイングはできないからです。

もっと極端に言うと、この「ボールの見方」さえできていれば、理想的なスイングに自然と近づいていくということです。

つまり、この「瞬時判断→決断→自分スイング」ができていなければ、

  • グリップ位置
  • トップの形
  • バット軌道
  • 体重移動

などを、どれだけ修正しても、実際にボールを打つ場面では、大きな変化は起こりません。

なぜなら、それらはすべて「どこを振りにいくかが決まっていること」が前提 だからです。

この前提がないままのフォーム修正は、対症療法(例えば、素振り専用の理想スイング)にしかならないのです。

なぜ今まで語られてこなかったのか?

理由はシンプルです。

この「ボールの見方」という要素は、

  • 目で見えない
  • 動画にも映らない
  • 数値化できない
  • そして何より「打てる人ほど、無意識にできてしまっている」

そのため、語られることはもちろん、正しく認識している人も少ないのだと思います。

いわゆる「センスのある打者」は、最初からこの「判断と決断」が自然にできていると考えられます。

そのため、

  • 本人はその理論の重要性に気づかない
  • 言語化する必要もない
  • 指導現場では「感覚論」で済まされる

こうして、この最重要ポイントは長年、誰にも体系化されてこなかったのだと思われます。

少なくとも、私自信は様々な情報を集める中で、この「ボールの見方」を中心に提唱しているものとはまだ出会っていません。

ただ、メジャーリーグにおいてはこの「ボールの見方」と似たような考え方で、「EPR:Early Pitch Recognition(アーリーピッチレコグニション)」という言葉があります。

これは「できるだけ早い段階で何が来るかを察知する力」のことを意味します。

私は、このEPRという考え方と、既に説明したスイング中の「ボールの見方」を合わせ、「EPR Swing:アプルスイング」と名付けました。

まずは「騙された」と思って試してみてほしいこと

まずは騙されたと思って、「リリースの瞬間だけで判断し、視線をインパクトゾーンに先回り」させてください。

これには、

  • 「目を逸らす勇気」を持つこと
  • 「目で見る方が打てる」という錯覚を捨てること

が必要となります。

ただ、これができていなかった人が、初めてこれをやってみると、

  • 今まで経験したことのない「ジャストミート感覚」
  • 今までに経験のない「思い切りよいスイング感覚」

という、はっきりとした「違い」を体感できるはずです。

もちろん、視線をインパクトゾーンに向けることは、フォームとしても下記の良い影響を与えていると考えられます。

「スイング開始と同時に、頭を反対方向に回旋するため、この動きがカウンターの働きしてくれる

その結果として、下記の繋がります。

  • 身体が開きすぎない(体の正面で打てる)
  • 顔の位置がブレず、最後まで残りやすい
  • 回転軸が安定している
  • 自然と体幹主導でヘッドが走る

「EPR Swing:アプルスイング」ができていない人に多い現象

かつての私もそうでした。

この感覚がまだ身についていない人には、次のような共通点があります。

  • ファーストストライクに、なかなか手が出ない
  • ジャストミートするイメージが湧かない
  • タイミングが合わず、どうしても合わせにいってしまう
  • フェアゾーンへの力のない凡打が多い
  • 思い切りの良い空振りができない

中でもこの「思いっきりの良い空振りができない」という人はかなりの確率で、「EPR Swing:アプルスイング」ができていません。

また、できないと同時に「思いっきりの良い空振りができるのは、センスが違う人」だと諦めてる人も多いと思います。

いずれにしても、これらの悩みをお持ちの選手は非常に多いと思います。

そういったみなさんには、まずはこの「EPR Swing:アプルスイング」を一度試していただきたいと思います。

そうすれば「これはセンスの違いではなかったんだ」ということがわかるはずです。

特に幼い頃は、フォームをいじり倒すよりも、まずはこの「EPR Swing:アプルスイング」ができていることが重要です。

もちろん、選手の中には既に、無意識でこれができている選手も、一定数いると思います。

そういった選手は、本当の意味で感覚的なセンスのある選手だと思います。

そういった選手に対して、

間違っても「最初から最後までボールを見ろ」というような指導してはならない。

ということも、バッティング指導者にとって外してはならないポイントだと思います。

少し長くなりましたので、第11話(前編)は一旦ここまでにし、この続ぎは第12話(後編)で説明したいと思います。

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※本記事の内容は、筆者自身の経験と考察に基づく個人的な見解です。すべての選手・指導環境に当てはまるものではありませんので、参考の一つとしてお読みください。

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