第6話|正しい「ヘッドの立てる」とは?――映像ではヘッドは下がる理由――

バッティング理論

「ヘッドを立てろ」

この一言が、なぜこれほど多くの打者を混乱させ、なぜこれほど多くの“力み”を生むのか。

ここでは「ヘッドが立つ」という表現について、感覚論でごまかさずに、そのメカニズムを解体していきます。

「ヘッドを立てる」が生む“力みの罠”

まず最初に強調したいのがこれです。

ヘッドを立てようと、意識した瞬間に、打者は力みます。

  • ヘッドは重い
  • 立てる=重力に逆らう
  • 逆らう=力を入れる

この連想が、無意識に起こるからです。

結果として、下記の弊害につながります。

  • 前腕の過緊張
  • 手首の固定
  • 肩・首まで連動した力み

そして、力みにより、これまで何度も書いてきた「脱力」による理想的な動きが阻害されるのです。

どの場面でどう「ヘッドが立つ」べきなのか?

① テイクバックのフェーズ

指導現場で言われる「ヘッドを立てろ」の中には、「テイクバックでコックが利いている状態」を指しているケースがあります。

この段階で重要なのは、ボトムハンドの手首に適切なコックが利いていることです。 

※ボトムハンド:右バッターにとっての左手

※コック:ボトムハンドの手首が撓屈&背屈位

※撓屈:手首を親指側に曲げる動作

※背屈:手首を手の甲側に曲げる動作

結果として、ヘッドがややピッチャー方向に倒れた位置をとります。

これを「ヘッドが立っている」と表現する場合があります。

② 体重移動+グリップが前に動き始めるフェーズ

このフェーズが、ヘッドを立てる論で、最も誤解されやすいフェーズです。

体重移動しながら、グリップが前に動き始めると、ヘッドは必ず重さと慣性によって遅れます

その結果、バットが傾くほど、ヘッドは下がろうとする回転モーメントが強まります。

このとき、ボトムハンドの手首が、その重さに負けて、尺屈しないようにする必要があります。 

※尺屈:手首を小指側に曲げる動作

ここで、尺屈するということは、「コックが解ける」ということになります。

つまりは、

  • インサイドアウトではなくなり
  • 早期にヘッドが前に出てしまい
  • 肝心なインパクトで十分な力が発揮できない

いわゆる「ヘッドの走らないスイング」ということに繋がります。

また、コックが解けた状態で寝ているバットは、コックが解けていることにより、

  • ヘッドが大きく遠回りし
  • インパクトまでに、より長い時間と力が必要とし
  • より大きな回転モーメント(ヘッドが下がる力)が働き
  • 一度解けたコックをスイング途中で戻すことはできない

ということになります。

理想は、軽く撓屈したコックを維持することです。

③ さらにグリップが前に加速するフェーズ

グリップが前に出ていけば、ヘッドは取り残されます。

結果として、ヘッドは背面方向へ落ちていくように見えるますが、ここで絶対にやってはいけないことがあります。

それは、ヘッドの重さに負けて、ボトムハンドを掌屈してしまうことです。 

※掌屈:手首を手のひら側に曲げる動作

掌屈が起きた瞬間、コックは解け、先ほどの尺屈時と同様の結果となります。

④ インパクト前後のフェーズ

インパクト手前では、

  • グリップの前への移動速度が遅くなり
  • その後、グリップを中心に、バットが円運動する

当然ながら、ここでもヘッドは重いため、グリップを中心に、一旦ヘッドが下がる方向への円運動します。

ただ、その円運動も、ヘッドがグリップ位置を追い越すにつれ、グリップを中心に、ヘッドが上向きに上がってきます

このタイミングが、いわゆる

  • トップハンドによる押し込みの時期であり
  • ヘッドが走り「ヘッドが立つ」場面である

ここでは、グリップ位置の動きが少なくなる(極端にいうと止まる)ことが重要で、これがなければ、その先のヘッドの走りや立ち上がりは実現できません。

ただし、この動きも「結果としてそうなる動き」です。

これを、意識的に各所をタイミング良く動かそうと思っても、当然ながら、その通りに再現することはできません。

適度にヘッドを立たせるための意識づけ

最終的に私自身が辿り着いた意識として、

  • 常に、ボトムハンドのコックを適度に利かせ、それ以外は脱力
  • 身体の回転に続いてグリップが先行
  • インパクトに向けて脱力によりヘッドが身体に沿って落ち
  • バットが水平になるタイミングで、グリップ位置を止め、手首の角度はそのままで、左肩関節外旋の動きにより、ヘッドを前上方向に立てる(ボトムハンドの前腕を中心に軸回転)

という意識です。

私の場合は、このくらいの意識で、

「インパクト前に、ヘッドがちょうど適度に下がり、そこからしっかりと立ちあがつてくれる」

ということがわかりました。

また、どちらかというと、

  • ヘッドが遠回りする
  • ヘッドが下がりすぎる

そのような人にとっての、極端な意識付け方法として、

「テイクバックから振り始めにかけて、常にヘッドの位置が、グリップよりも前にある状態を、維持する」イメージで振ることも一つの方法であります。

これによりヘッドが立ちやすく、下がりにくくなります。

ヘッドの立たせ具合についても、自分の状態を正しく把握し、それに合った意識付けを選びましょう。

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※本記事の内容は、筆者自身の経験と考察に基づく個人的な見解です。すべての選手・指導環境に当てはまるものではありませんので、参考の一つとしてお読みください。

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