「ヘッドを立てろ」
この一言が、なぜこれほど多くの打者を混乱させ、なぜこれほど多くの“力み”を生むのか。
ここでは「ヘッドが立つ」という表現について、感覚論でごまかさずに、そのメカニズムを解体していきます。
「ヘッドを立てる」が生む“力みの罠”
まず最初に強調したいのがこれです。
ヘッドを立てようと、意識した瞬間に、打者は力みます。
- ヘッドは重い
- 立てる=重力に逆らう
- 逆らう=力を入れる
この連想が、無意識に起こるからです。
結果として、下記の弊害につながります。
- 前腕の過緊張
- 手首の固定
- 肩・首まで連動した力み
そして、力みにより、これまで何度も書いてきた「脱力」による理想的な動きが阻害されるのです。
どの場面でどう「ヘッドが立つ」べきなのか?
① テイクバックのフェーズ

指導現場で言われる「ヘッドを立てろ」の中には、「テイクバックでコックが利いている状態」を指しているケースがあります。
この段階で重要なのは、ボトムハンドの手首に適切なコックが利いていることです。
※ボトムハンド:右バッターにとっての左手
※コック:ボトムハンドの手首が撓屈&背屈位
※撓屈:手首を親指側に曲げる動作
※背屈:手首を手の甲側に曲げる動作
結果として、ヘッドがややピッチャー方向に倒れた位置をとります。
これを「ヘッドが立っている」と表現する場合があります。
② 体重移動+グリップが前に動き始めるフェーズ

このフェーズが、ヘッドを立てる論で、最も誤解されやすいフェーズです。
体重移動しながら、グリップが前に動き始めると、ヘッドは必ず重さと慣性によって遅れます。
その結果、バットが傾くほど、ヘッドは下がろうとする回転モーメントが強まります。
このとき、ボトムハンドの手首が、その重さに負けて、尺屈しないようにする必要があります。
※尺屈:手首を小指側に曲げる動作
ここで、尺屈するということは、「コックが解ける」ということになります。
つまりは、
- インサイドアウトではなくなり
- 早期にヘッドが前に出てしまい
- 肝心なインパクトで十分な力が発揮できない
いわゆる「ヘッドの走らないスイング」ということに繋がります。
また、コックが解けた状態で寝ているバットは、コックが解けていることにより、
- ヘッドが大きく遠回りし
- インパクトまでに、より長い時間と力が必要とし
- より大きな回転モーメント(ヘッドが下がる力)が働き
- 一度解けたコックをスイング途中で戻すことはできない
ということになります。
理想は、軽く撓屈したコックを維持することです。
③ さらにグリップが前に加速するフェーズ

グリップが前に出ていけば、ヘッドは取り残されます。
結果として、ヘッドは背面方向へ落ちていくように見えるますが、ここで絶対にやってはいけないことがあります。
それは、ヘッドの重さに負けて、ボトムハンドを掌屈してしまうことです。
※掌屈:手首を手のひら側に曲げる動作
掌屈が起きた瞬間、コックは解け、先ほどの尺屈時と同様の結果となります。
④ インパクト前後のフェーズ

インパクト手前では、
- グリップの前への移動速度が遅くなり
- その後、グリップを中心に、バットが円運動する
当然ながら、ここでもヘッドは重いため、グリップを中心に、一旦ヘッドが下がる方向への円運動します。
ただ、その円運動も、ヘッドがグリップ位置を追い越すにつれ、グリップを中心に、ヘッドが上向きに上がってきます。
このタイミングが、いわゆる
- トップハンドによる押し込みの時期であり
- ヘッドが走り「ヘッドが立つ」場面である
ここでは、グリップ位置の動きが少なくなる(極端にいうと止まる)ことが重要で、これがなければ、その先のヘッドの走りや立ち上がりは実現できません。
ただし、この動きも「結果としてそうなる動き」です。
これを、意識的に各所をタイミング良く動かそうと思っても、当然ながら、その通りに再現することはできません。
適度にヘッドを立たせるための意識づけ
最終的に私自身が辿り着いた意識として、
- 常に、ボトムハンドのコックを適度に利かせ、それ以外は脱力
- 身体の回転に続いてグリップが先行
- インパクトに向けて脱力によりヘッドが身体に沿って落ち
- バットが水平になるタイミングで、グリップ位置を止め、手首の角度はそのままで、左肩関節外旋の動きにより、ヘッドを前上方向に立てる(ボトムハンドの前腕を中心に軸回転)
という意識です。
私の場合は、このくらいの意識で、
「インパクト前に、ヘッドがちょうど適度に下がり、そこからしっかりと立ちあがつてくれる」
ということがわかりました。
また、どちらかというと、
- ヘッドが遠回りする
- ヘッドが下がりすぎる
そのような人にとっての、極端な意識付け方法として、
「テイクバックから振り始めにかけて、常にヘッドの位置が、グリップよりも前にある状態を、維持する」イメージで振ることも一つの方法であります。
これによりヘッドが立ちやすく、下がりにくくなります。
ヘッドの立たせ具合についても、自分の状態を正しく把握し、それに合った意識付けを選びましょう。
まとめて読みたい
第5話|縦振りの罠――「やるもの」ではなく「そう見えるもの」

第7話|インサイドアウトは万能か?――脱力と順序が生む「理想の軌道」――

※【バッティング理論】全話一覧はこちら↓

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※本記事の内容は、筆者自身の経験と考察に基づく個人的な見解です。すべての選手・指導環境に当てはまるものではありませんので、参考の一つとしてお読みください。
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