第10話|4スタンス理論とは?――「自分のフォーム」を無理に直さなくていい――

バッティング理論

野球のバッティング理論を学んでいくと、必ず一度はぶつかる疑問があります。

  • ある人には合う打ち方が、自分にはまったく合わない。
  • プロ野球やメジャーリーグでは、正反対に見えるフォームの打者が、どちらも結果を出している。
  • 「これが正解」と言われたフォームを真似すると、むしろ調子を崩す。

私は長年、この違和感をうまく説明できる言葉を探してきました。

その中で、最も腑に落ちた理論が 4スタンス理論 です。

4スタンス理論とは何か?

4スタンス理論は、廣戸聡一(ひろと・そういち)氏によって提唱された理論です。

もともとは、スポーツ全般における

  • 立ち方
  • 重心の位置
  • 力の入りやすい方向
  • 体の回転の特性

を整理するための理論で、野球に限らずゴルフ・陸上・武道など多くの競技で活用されています。

この理論の核心は、とてもシンプルです。

人の身体の使い方には、

生まれ持った「軸の取り方」がありそれは 4つのタイプ に大別できる

という考え方です。

4つのタイプの分け方

4スタンス理論では、身体の軸を次の2つの視点で分類します。

① Aタイプ / Bタイプ

  • Aタイプ:かかと側に重心があり、後ろ軸で力を出しやすい
  • Bタイプ:つま先側に重心があり、前軸で力を出しやすい

② 1タイプ / 2タイプ

  • 1タイプ:体の内側に回転軸があり、コンパクトな回転が得意
  • 2タイプ:体の外側に回転軸があり、大きな動きの中で力が出る

この組み合わせで、

  • A1
  • A2
  • B1
  • B2

という 4タイプ に分かれます。

重要なのは、

「タイプが違えば、楽にできる動きも、しんどい動きも真逆になる」

という点です。

有名選手のタイプ分けの例(傾向)

プロ野球やメジャーリーグを見ていると、

  • 大きく動く打者
  • ほとんど動かない打者
  • 早く開くように見える打者
  • 最後まで胸を見せない打者

といった、相反するように見える打ち方が共存しています。

4スタンス理論の視点で見ると、これらは非常に納得がいきます。

A2タイプ傾向の選手

  • 大谷翔平選手
  • 柳田悠岐選手

後ろ軸が強く、体を抑え込まずに振った方が力が出るタイプ。

A1タイプ傾向の選手

  • イチロー選手
  • 秋山翔吾選手

軸足にしっかり乗り、コンパクトで再現性の高い動き。

B1タイプ傾向の選手

  • 坂本勇人選手
  • 山田哲人選手

前軸で鋭く回転し、インパクトゾーンが長い。

B2タイプ傾向の選手

  • 鈴木誠也選手
  • マイク・トラウト選手

前軸+外回転で、爆発力のあるスイング。

一見すると「真逆」に見える打ち方も、タイプが違うだけで、どちらも正解なのです。

私自身は「完全なA2タイプ」

ここからは、私自身の話になりますが、少しだけお付き合いください。

私は4スタンス理論でいうと、かなりはっきりしたA2タイプです。

これまで長年、草野球で試行錯誤を続ける中で、

  • なぜ上手くいくときと、いかないときがあるのか
  • なぜ一般的に「正しい」とされる打ち方がしんどく感じるのか

ずっと答えが出ませんでした。

しかし、A2という視点で自分のスイングを見直したとき、これまでの経験が一気につながりました。

A2タイプの私にとって、「実際に効果があったこと」とは、次のような考え方・動きでした。

胸を無理に回さない

いわゆる「腰を回して打て」という意識は、私の場合、いわゆる「身体が開く」ばかりでした。

その結果、第四話でもお話した開きのデメリットばかりが目立つ結果でした。

そこでA2へのアドバイスとして、

「A2は、打とうとすれば、腰は勝手に回る(むしろ回し過ぎる)。だから、できるだけ胸はホームベース方向を維持し、回そうとしないことだけ意識すればよい。」

それを試したところ、正にA2の私にマッチし、

  • 身体の開き
  • ヘッドが出てこない
  • 差し込まれる
  • 反対方向への打球が弱くスライスする
  • 変化球に弱い

などの、明確な効果を手に入れることができました。

なお、「バッティングにおける体幹の回旋」については、下記の第4話にて詳しくご説明しています。

第4話|映像では「開いている」のに、なぜ「開くな」と指導されるのか?――理想の回転と減速――

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② クローズ気味の踏み込み

もともと、落合選手や清原選手のバッティングも参考にしていたこともあり、私にはいつのまにかオープンスタンス(踏み込みオープン気味)が染み付いていました。

このスタンスについても、開く傾向にあるA2には

「構えはさておき、踏み込み足はヒップファーストを意識し、ややクローズ(半足分程度の位置につま先はわずかにキャッチャー向きに)に踏み込む」

この方が、①の胸開かないという点とも相性がよく、①と同様に私の「開きやすい弱点」に対して効果を発揮してくれました。

また、②にはヒップファーストにより、「胸や上半身はできるだけ回転を抑え、骨盤の回転だけを意識する」という、自分にとっては股関節・骨盤が中心のちょうど良い感覚にも出会いました。

③ インパクトで後ろ足カウンター

「開きやすいA2」へのもう一つのアドバイスとして、

前足には「十分なくらい」体重移動する

後ろ足重心になると、

  • 前足の股関節への荷重も少なく
  • そのため、容易に骨盤が開き
  • それに伴って、胸や肩が開いてしまう

という現象が起こります。

私の場合、どうしても後ろ足に重心が寄りすぎる傾向があったため、

前足にしっかり荷重する(むしろ後ろ足は浮かせるくらいの)意識

で、開き癖がちょうど抑えることができました。

また、後ろ足を浮かせるコツとして、

  • 前足はクローズに踏み込み
  • スイングと同時に、後ろ足の膝を背中方向に曲げるように浮かせる

これにより、身体が回転する方向とは逆方向への回転する力(カウンター)が発生し、軸を安定させて打ちやすくなりました。

なお、「バッティングにおける体重移動」については、下記の第9話で詳しくご説明しています。

第9話|「軸足重心か?前足重心か?」――なぜ強打者は後傾しているのか――

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「合わなかった指導」の正体

振り返ると、これまで合わなかった指導の多くは、

  • 腰を回せ
  • トップハンドで押し込め
  • 後ろ足で蹴れ

など、他のタイプ向けの言葉だったように思います。

それが悪いわけではありません。

ただ、私の身体の使い方とは前提が違っただけです。

4スタンス理論自体がどこまで万人にあてはまるのかは正直わかりませんが、タイプ別の動き方があるということは間違いない事実だと思います。

つまり、自分がどのタイプであるかを知っておくことは、これから指導を受けたり、流行りの打ち方を試す際の前提として、非常に重要視すべきことだということです。

まとめて読みたい

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※本記事の内容は、筆者自身の経験と考察に基づく個人的な見解です。すべての選手・指導環境に当てはまるものではありませんので、参考の一つとしてお読みください。

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