プロ野球選手の多くが口をそろえて「バッティングで一番大事なのはタイミング」と言います。
しかし、そのタイミングを「どこから、どう取るのか」を具体的に説明した言葉を、私はほとんど聞いたことがありません。
よくある表現に「1、2の3で振れ」というものがあります。
これ自体は、実は理に適っているのです。
ただ、
- その「1」がいつ始まるのか?
- どんなテンポの1、2なのか?
- 球速が変わったらどうするのか?
といった本質的な部分は、あまり語られていません。
タイミング = 「準備」と「始動」のルーティン
タイミングとは、 ボールに合わせて振り始めることではありません。
リリースの瞬間に「来る場所」を予測し、 そこを自分のスイングで振りにいくための「準備と始動の基準(ルーティン)」を作ることです。
それが本当の意味でのタイミングの取り方です。
まず「準備」のタイミングを決める
まず決めるのは、「準備」を始めるタイミングです。
おすすめのシンプルな方法は、
「ピッチャーのテイクバックに合わせて、バッターもテイクバックに入る」
これだけです。
ここで重要なのは「早く振ること」ではなく、 準備遅れを起こさないことです。
この時点ではまだ振りません。
次に「始動」のタイミングを決める
次に決めるのが、 体重移動(スイング始動)を始めるタイミングです。
シンプルなおすすめの方法は、
「ピッチャーがテイクバックを終え、前方向へのアクセレーションに移る瞬間に、バッターも前方への体重移動を開始する」
これだけです。
あとは、第11話と第12話で最重要理論として説明した「EPR swing(アプルスイング)」の通り、
ピッチャーがリリースした瞬間に判断した
- 球速
- 球種
- コース
をもとに、自分のスイングを出しに行くだけです。


球速が変化にはどう対応するの?
- 時速100km
- 時速120km
- 時速140km。
数字だけ見ると大きな差に感じますが、 実際に打者が感じるタイミング差は、時速20kmの差に対しておよそ0.1秒しか違わないのです。
つまり、この程度の球速差であれば
スイング始動を同じ基準で行っても、その後の調整で十分に対応できる範囲
なのです。
- 「球速が速い投手だから、始動を早くしなければならない」
- 「変化球だから始動を待たなければならない」
そう感じるのは錯覚であり、 本当は
「始動の基準は一定で、インパクト前の力を込めるタイミングが0.1秒早いか遅いか程度の違い」
なのです。
つまり、
- どの球速の投手であっても
- ストレートでも変化球でも
とにかく同じタイミングでスイングを始動し、そこから先は「感覚的な調節」に委ねるのです。
その最後に行う「感覚的な調整」を研ぎ澄ませるためにも、この「準備」と「始動」がいつも同じであることが重要となるのです。
打つ・打たないの判断はいつするのか?
先ほども述べた通り、コースや球種などの最終判断は、ピッチャーのリリース直後の一瞬で行います。
ということは、打つ・打たないの判断も、このタイミングで行うことになります。
つまり、打つ・打たないの判断までの順序を、細分化してみると、
- ピッチャーのテイクバックに合わせて、バッターもテイクバックする
- ピッチャーのアクセレーションに合わせて、バッターも体重移動しはじめる(ただし、一気に移すのではない)
- 体重移動しながら、ピッチャーがリリースする
- リリースの直後の一瞬で、ボールで軌道を予測し、打つ・打たないを判断する
- 打つならそのままスイングする、打たない場合はスイングを止める
という流れになります。
だからこそ、これもよく聞く指導フレーズですが
「良い見送り方とは、全てのボールを打ちに行った上で止める」
と言われるのはこのためです。
また、プロやメジャーの選手も、ボールを見送る時に、
- 体重移動しながら
- 身体が回転し始めながら
- それに遅れてバットが回りはじめ
- そこでスイングを止める
という仕草をよく見ると思います。
このタイミング理論を、選手自身がどこまで自覚しているかはわかりません。
もちろん、無意識でできてきる人も多いかも知れません。
いずれにしても、正しいタイミングの取り方を詳しく言語化すると、このような理論になるのです。
本物のタイミングの取り方練習
最後に、この考え方と動きが身体に染み付いてくると、 ある表現に自然とたどり着きます。
それが、
「自分のタイミング(間・リズム)で打っている」
という状態です。
これは感覚論でもセンス論でもありません。
- 「準備」と「始動」のタイミング
- 「予測」と「判断」の上でのスイング
これらが噛み合った結果、
「再現性の高い自分のタイミング」が実現するのです。
バッティング練習をする時も、漫然とタイミングを取ろうと努力を重ねても、上達は限定的です。
正しいバッティング練習は、
- 相手のピッチャーに合わせて
- このタイミングの取り方を繰り返し
- 再現性の高いタイミングでスイングできる
ようになることを目指すものなのです。
私自身も、マシンによるバッティング練習では、
- マシンのアームが真後ろ(9時の方向)を通る時に、テイクバックを開始する
- その後すぐ、いつでもスイングし始められる体勢で、前に体重移動を始める
- 体重移動しながら、リリース直後のボールやをみて、振り出しの判断をする
- 振り出す時には、既にインパクトゾーンだけを見てスイングする
というタイミングの取り方が、最も再現性よくタイミングを取ることができました。
せっかくバッティング練習を日々重ねるみなさんには、より意義のある練習に時間を費やして欲しいと思います。
そのためにも、この正しいタイミングの取り方、そして第11話・第12話で取り上げたEPR swing(アプルスイング)を反復し、その精度を高めることに時間を費やしてください。
まとめて読みたい
第12話|バッティング理論の核心と盲点!「ボールを見る」とは?【後編】

第14話|バッティング理論の前にあるもの――上達の共通基盤――

※【バッティング理論】全話一覧はこちら↓

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※本記事の内容は、筆者自身の経験と考察に基づく個人的な見解です。すべての選手・指導環境に当てはまるものではありませんので、参考の一つとしてお読みください。
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